15-3. 細胞,組織,個体発生を操作する技術
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1) 細胞工学
細胞に手を加えて新たな細胞や細胞形態を作り出す技術 https://gyazo.com/a3f7695a979c40867f94ffb6ed6847cb
2) 発生工学
卵割途中の割球をいったんバラバラにしてから再度集合させる 胞胚内部に遺伝的に異なる割球や未分化細胞を注入する
生まれた仔は身体全体の細胞構成が遺伝的に不均一なキメラ個体となる https://gyazo.com/ba952b3b405108a03b212951b8230269
いわゆる、体のある部分の細胞が本来の親以外のゲノムを持つものからなる個体
この定義からすると、臓器移植を受けた人間もキメラである
3) クローン動物
高等動物で、核を除いた卵(未受精卵)に初期胚を移植してつくった個体 体細胞の核を移植して作った個体
マウスなどの場合、いずれも核移植細胞を擬似妊娠動物に入れて仔を誕生させることにより、核を採取した動物個体のクローン個体をつくることができる
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ただ、ヒトではクローン個体作製は安全上/健康上の問題や倫理的な問題、そして法的な問題(e.g. 母親の核を使ってクローン個体を産んだ場合、民法上は子を出産した母体は母であるが、生物学的には子が母を産んだことになる)等の観点から禁止されている
クローン人間の禁止
4) 組織工学と再生医療
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失われた細胞や組織が幹細胞の分化・増殖を伴って補填される現象を再生というが、事故や病気で失われた組織を人為的な操作で復元させる医療を再生医療という 当初は再生用組織の材料として分化させたES細胞が考えられていたが、ES細胞には拒絶反応をはじめとする多くの問題があるため、現在では次に述べるiPS細胞を利用する研究が多くなっている 表15-2 ES細胞やiPS細胞を再生医療に用いる場合の問題点
ES細胞に特有な問題
卵の確保
倫理的問題(生命の萌芽をどう扱うか)
双方が抱える問題
分化細胞の純化
望む細胞・組織構築の可否
法律の整備
ゲノム初期化の機構が未解決
工学など、他分野の支援
未分化状態の安定維持
iPS細胞に特有な問題
がん関連遺伝子使用の可否
材料細胞をどこから得るかの選択
低い初期化効率
5) iPS細胞
ES細胞をもとにした再生医療の最大の問題点である拒絶反応を完全に回避するためには、レシピエント(移植を受ける側)のふつうの細胞をもとに作製した多分化能をもつ細胞の開発が望まれる亜g、それに初めて成功したのが山中伸弥博士のグループ 作製の経緯とメカニズム
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4種類ので因子は山中因子といわれるが、これらの因子は転写調節因子で、未分化状態の維持と増殖に必要な遺伝子を活性化し、細胞を安定な多能性幹細胞状態に変化させると考えられる 未分化状態維持にはOct3/4が中心的な役割を果たすと推定され、c-Mycは細胞増殖維持に働くことが知られている 応用
iPS細胞はES細胞のように人為的操作によって希望する組織に誘導することができ、日本ではすでに加齢黄斑変性の臨床試験に患者本人から作製したiPS細胞が用いられている レシピエントの細胞からiPS細胞をつくるのが理想的ではあるが、実際には相当な時間と費用を要する
そこで現在、他人の細胞からつくった多様なHLA(ヒト細胞の型を決める表面抗原)をもつiPS細胞をライブラリーあるいはストックとして用意し、必要に応じて利用可能な型のiPS細胞株を利用する取り組みがなされている このようなことから、現在、ES細胞がまた見直されてきている
問題点
初期化に原がん遺伝子のc-Mycを使うことから、研究者はとりわけがん化の危険性に注意を払っているが、このための取り組みとして細胞増殖促進に働く遺伝子をあまり働かせないような工夫もなされている iPS細胞化の効率を上げることや、利用目的に合った細胞種の選択も検討課題になっている
新たな取り組み
疾患の発症機構や薬剤効果の研究では、これまで疾患モデル動物や培養細胞、あるいは遺伝子を強制発現した細胞などが使われてきた しかしいずれもヒトの疾患状態を正しく示す材料ではないため、研究進展の妨げになっていた
この問題を解決するため、近年、患者から作製した疾患iPS細胞を目的の組織に分化させたものを用いる研究が進んでいる 疾患iPS細胞を使うことにより、より精度の高い薬効評価や病態多様性の理解、そして疾患分類と治療法の再評価が実現するかもしれない